皆さんは「紅烏龍茶」をご存知でしょうか?
紅茶ではありません。烏龍茶です。でも、青(緑)色の烏龍茶でも、茶褐色の烏龍茶でもありません。紅色の烏龍茶です。

台東紅烏龍は、台湾茶の歴史の中で最も若い茶種です。
紅茶のやさしい甘みと、烏龍茶の豊かな香りを併せ持つのが魅力です。
台東縣政府はここ数年、地元の茶業者をバックアップしながら転換・研究開発を支援し、唯一無二の「台東紅烏龍」産業を築いてきました。
この台東名産の「紅烏龍茶」ですが、まだまだ日本では知名度は低いのが現状です。
ここで「紅烏龍茶」についてご紹介しましょう。
1.「紅」烏龍は紅茶?それとも烏龍茶?
パッションフルーツ、パイナップル、オレンジブロッサム、トフィー、ベリー、カカオ等々これらはすべて、紅烏龍茶から感じられる風味です。
1869年、台湾茶は Formosa Oolong Tea としてニューヨークへ輸出され、その名を世界に知らしめ、台湾茶輸出の黄金時代が幕を開けました。以来100年以上にわたり、台湾茶は「少量・高品質」を特徴とし、各国で高い評価を受けています。
世界の六大茶類の中で、台湾は国際的に青茶(烏龍茶)を強みとしており、清らかな香りの文山包種茶や高山茶、焙煎香が際立つ凍頂烏龍や鉄観音、小緑葉蟬の作用によって生まれる東方美人茶などが知られています。
紅烏龍は、烏龍茶の中でも最も酸化度が高い(約80%)茶種で、2008年に台東の風土と茶師の技を生かして誕生した、いわば「新世代の台湾烏龍茶」です。
伝統的な烏龍茶の「萎凋」「焙煎」工程に、紅茶の「揉捻」「十分な発酵」の要素を融合させ、香りは烏龍茶、味わいと喉越しは紅茶の甘みを併せ持つ、独特の風味を生み出しています。
製法の重なりは茶湯の個性に大きく影響します。
萎凋時間の微調整、攪拌の強弱、揉捻の力加減、焙煎方法といったさまざまな「パラメーター調整」によって、紅烏龍は実に多彩で明確なスタイルの違いを表現できるのです。
一般的な台湾の茶産地では、主に3~4種類の茶樹品種が栽培されていますが、台東の茶産地には10種類以上の茶樹品種があります。主な品種は、金萱、沁玉、迎香、大葉烏龍。
そのほか少量栽培されている品種として、青心大冇、山蘊、武夷、翠玉、仏手、水仙、青心烏龍などがあります。
茶葉(茶菁)の状態、茶樹品種、そして茶師の個性によって、紅烏龍には「花香系」「蜜香系」「焙煎香系」「果香系」「ミルク香系」「ウッディ系」という6つの異なるスタイルが生まれます。
これらは単独で楽しめるだけでなく、互いに組み合わせることも可能です(たとえば「蜜香系+果香系」)。
まるでZ世代の若者たちのように、多様で創造性にあふれ、誰もが自分好みの一杯に出会えるのが紅烏龍の魅力です。
では、なぜ「紅烏龍」と呼ばれるのでしょうか。それは、烏龍茶と紅茶、両方の製法を融合しているからです。
紅烏龍は「烏龍茶」に分類される中で、最も酸化度が高い茶種。その香りは一切の外部要素に頼らず、香料やドライフルーツ、花びらなどを加えることもありません。
ただひたすら、茶師の高度な製茶技術によって、一杯の完成された茶湯が生み出されるのです。それは、台湾製茶が百年にわたり培ってきた誇りであり、この島が育んだ、唯一無二の香りなのです。

2.衰退から再生へ──紅烏龍が切り拓いた産地復興の道
台東は台湾における新興の茶産地であり、1960年代以降になってから本格的に茶の大規模栽培が始まりました。初期の茶園は主に鹿野郷、卑南郷、延平郷などに集中し、アッサム系大葉種の紅茶を栽培して輸出していました。
産地は北回帰線以南に位置し、日照に恵まれ、乾燥した気候で、年間平均気温は23.5度。茶樹の生育は台湾西部よりも早く、台湾で最も早く茶摘みができる地域とされていました。早春茶や晩冬茶を強みとし、最盛期には茶園面積が600ヘクタールを超える規模にまで発展しました。
しかし、1980年代、紅茶輸出の衰退がはじまりました。
台東の茶産地は「紅」から「緑」へ。農家は烏龍茶へと転換していったのです。
1950~1970年代、台湾は大葉種紅茶輸出の黄金期を迎え、紅茶は台湾が世界貿易とつながっていた象徴でもありました。しかし1980年代に入ると、中国、ベトナム、スリランカなどから低価格の紅茶が台頭し、台湾の紅茶は価格面・生産規模の両面で競争力を失います。輸出中心から国内市場へと転換を迫られ、国内では烏龍茶嗜好が主流であったことから、台東の茶産地も流れに乗り、烏龍茶に適した小葉種茶樹へと植え替えを進めました。
茶湯は「紅」から「緑」へと変わり、清香型の烏龍茶の製造が始まり、やがて「福鹿茶」という地域ブランドとして展開されていきました。
1990年代に高山茶ブームが到来すると、台湾ではお茶を選ぶ際に標高の高さや澄んだ香りがより重視されるようになりました。しかし、これは台東にとって不利な条件でした。鹿野の標高は200~350メートルに過ぎず、清香型烏龍茶を製造するにしても、福寿山や梨山といった高山茶産地の標高には及びません。また香りの面でも、坪林の包種茶には太刀打ちできず、次第に市場競争力を失い、茶園面積は一時100ヘクタール以下にまで縮小しました。
台東の茶園が徐々に姿を消していく中、農業部 茶及飲料作物改良場 東部分場(旧・茶業改良場東部分場)は、危機に瀕した産業を救う決意を固めます。台東特有の熱帯性気候、酸性土壌、降雨量の少なさに着目し、製茶師や茶農と力を合わせて議論を重ねた結果、「重萎凋・重揉捻・重焙火」という製茶工藝が生み出されました。
2008年、当時の茶改場東部分場長であった呉声舜氏によって製法が正式に確立され、これを「紅烏龍(レッド・ウーロン)」と命名。
Made in Taiwanの新たな地域特色茶として、台東茶産地の競争力を再構築する大きな転機となったのです。
紅烏龍の誕生は、台東の茶産地に新たなポジションをもたらしました。
高山茶のように清らかな香りを追い求めるわけでもなく、伝統的な紅茶のように強い収斂性を持つわけでもない。甘く、まろやかで、包み込むような味わいこそが紅烏龍の最大の魅力です。
台東紅烏龍は、「低海抜では良いお茶は作れない」という固定観念を打ち破り、自分たちだけの道を切り拓くことを選びました。
しかし、台東ではそれ以前、清香型烏龍茶の栽培が主流であり、国内市場でも青茶を好む傾向が根強かったため、橙紅色に澄んだ茶湯で、烏龍茶にも紅茶にも見える紅烏龍は、登場当初なかなか受け入れられませんでした。
「これは紅茶なのか、それとも烏龍茶なのか?」という戸惑いの声が多く、農家からも
「市場ではもう“赤いお茶”は流行らないのに、なぜ今さら?」と疑問視されるほどだったのです。
紅烏龍が誕生した2008年、その年からすぐに農会は品評会を開催し、農家に製茶への挑戦を促しました。競技を通じて品質向上が図られ、紅烏龍の製茶技術は年々磨き上げられていきます。
2011年には「第1回熱気球フェスティバル」が開催され、夏の暑さ厳しい鹿野高台を訪れた人々が、冷泡(コールドブリュー)の紅烏龍を口にした瞬間の爽やかさが評判となり、好感度と知名度を一気に押し上げました。
その後も、製茶や焙煎技術の洗練と成熟が進み、台東紅烏龍の品質は年々向上。若く、既成概念に縛られない存在だからこそ、風味は豊かで多彩。パン、スイーツ、アイスクリーム、ビール、スパークリングドリンク、フレグランスなど、さまざまな分野とのコラボレーションが次々と生まれました。
若い紅烏龍は、ただ「美味しい一杯のお茶」にとどまらず、暮らしの中にそっと寄り添う一つの味わいへと姿を変えていったのです。
そして今、紅烏龍は台東を代表する重要な文化的シンボルとなりました。若者のUターン、次世代への継承、観光の活性化といった流れも追い風となり、その将来性はますます期待されています。
「新世代の台湾茶」として、紅烏龍は茶産業に若さと希望を注ぎ込み続けています。
3.紅烏龍の産地風土
紅烏龍は革新的な製茶製法によって生まれたお茶で、熟した果実のような甘い香り、焙煎由来の風味、そしてコクのある口当たりが特徴です。これらの魅力は、実は産地の風土と切っても切り離せない関係にあります。
主な茶産地は、中央山脈と海岸山脈に挟まれた花東縦谷平原の最南端に位置する「鹿野高台」に広がっています。ここはプレートの圧縮によって形成された独特な河岸段丘地形で、縦谷平原よりやや高い位置にあり、広く緩やかな斜面を有しています。排水性に優れ、水が溜まりにくい地形で、鹿寮渓・卑南渓・鹿野渓という三つの水系が微気候を調整し、灌漑水源としても機能しています。
標高は約200〜350メートル。風通しが良く、日照時間が長く、冬季は雲量が少ないのが特徴です。昼間は十分な日光を受け、夜間は気温が下がるため、昼夜の寒暖差が大きく、茶樹が風味成分を蓄積するのに適した環境が整っています。
鹿野や初鹿一帯の土壌は深さ約70〜90センチに及び、中程度の酸性をもつ壌土または粘土質土壌です。中央山脈を源とする河川の長年の堆積によって形成され、栄養分が豊富で、水はけが良い一方で養分をしっかり保持する特性があります。こうした土壌条件が、甘く澄んだ渋みの少ない茶の味わいの土台を支えています。
さらに、縦谷に流れる清らかな空気と純粋な水源、そして地域に根づく有機栽培や環境に配慮した農法への意識――これらすべてが、鹿野という土地ならではの恵まれた強みなのです。




紅烏龍は重い萎凋(長時間萎凋)を特徴とするため、害虫への耐性が比較的高く、さらにウンカ(小緑葉蟬)に吸汁されることで、魅力的な蜜香が引き出されることもあります。こうした特性から、多くの茶農は有機栽培や環境に配慮した友善耕作を選択しています。現在、台東の茶産地では半数以上の茶園が友善または有機茶園であり、台湾でも屈指の純粋な茶郷といえます。主産地の鹿野に加え、初鹿、卑南、太麻里などでも少量ながら栽培が行われています。
風土の優位性は栽培条件にとどまらず、製茶のリズムや風味の方向性にも直接影響します。晴れて乾燥した日照条件は、収穫後の茶葉により長く、均一な萎凋を可能にし、花香・果香の前駆体を蓄積させます。夜間の冷え込みと安定した気温は、その後の攪拌・揉捻工程における酵素的酸化をよりバランス良く進め、熟した果実香と厚みのある甘みを育てます。近年では、ウンカの活動時期が盛夏から晩秋〜初冬、さらには初春へと広がり、温暖で安定した気候のもと、自然な蜜香が形成されやすくなり、紅烏龍の製法特性と相乗効果を生んでいます。
台東紅烏龍は、茶業改良場・茶農・製茶師が協力し、台東の風土に合わせて初めて設計された台湾独自の製茶プロセスです。
重萎凋・重揉捻・重焙火——それは古来の技の継承であると同時に、台湾茶テロワールの新世代の幕開けでもあります。
4.革新的な品評会ルール:エリート主義を捨て、産地全体の品質を底上げ
2008年に誕生した紅烏龍は、その年からすぐに品評会が開催され、茶農の参加を促し、審査員からのフィードバックを通じて品質向上を重ねてきました。とりわけ当時の品評会規則には、次の二つの革新がありました。
① 順位をつけない評価方式
特等賞・頭等賞といった序列を設けず、金牌・銀牌・優良という評価区分のみを採用。一定の品質基準に達した茶はすべて金牌とされ、「優勝は一人だけ」というエリート思考から脱却しました。良いお茶を作れば、誰にでも金牌のチャンスがある——産地全体の品質向上を目的とした仕組みです。
② 品種不問、ブレンドも出品可
金萱、大葉烏龍、青心大冇、武夷など、茶樹の品種は不問。機械摘み・手摘みの区別もなく、製茶師は風味を最優先に、異なる品種やロットをブレンドして出品することが可能です。多様な表現と創造性を積極的に後押しするルールとなっています。
この革新的な制度が、紅烏龍の多彩な風味と産地全体のレベルアップを支えてきました。
これら二つの制度の狙いは次の通りです。
「基準達成型(達標制)」によって受賞の裾野を広げ、産地全体の平均品質を引き上げ、市場の信頼を確立すること。
そして「品種不問・ブレンド可」により、ロット差に対応しながら甘味とレイヤー感を安定させ、同時に風味最優先での創作を茶師に促すことです。
産地の実情に合わせ、品評会では機械摘み・手摘みのいずれも出品可としています。萎凋や焙火のパラメータを精密に調整することで葉質の差を補正し、生産コストの低減と参加の拡大を同時に実現しています。
5.私たちは、世界で最も烏龍茶づくりに長けた国
世界の六大茶類(緑茶・黄茶・白茶・青茶〈烏龍茶〉・紅茶・黒茶)の中で、台湾はとりわけ青茶(烏龍茶)の飲用と製茶技術において国際的に高い評価を受けています。
清香型から熟香型まで、多彩な烏龍茶があり、標高3,000メートルを超える高山から、300〜400メートルの台地まで、台湾は北から南、東から西へと広く茶産地が広がっています。
包種茶、高山烏龍茶、凍頂烏龍茶、鉄観音、東方美人茶といった代表的な烏龍茶に加え、百年にわたる輸出経験と製茶技術の蓄積を背景に、2008年、台東・鹿野で新たに確立された独自の製茶技法が生まれました。それが「紅烏龍茶」です。
この「少し烏龍、少し紅茶」の個性をもつ紅烏龍は、烏龍茶の萎凋・焙火と、紅茶の強い揉捻・後発酵を融合させた製法によるもの。
発酵度は約80%で、茶湯の色合いやまろやかさは紅茶に近く、外国人にも親しみやすい一方で、烏龍茶ならではの花香・果香・焙香・蜜香を豊かに備えています。
これは、茶業改良場東部分場が、台湾が誇る百年の製茶技術を基に、台東の風土に合わせて量身設計(オーダーメイド)した革新的な製程です。
長時間抽出しても渋くなりにくく、余韻の甘みが長く続く紅烏龍は、台東の代表的な地方特色茶であると同時に、台湾から世界へ贈る一杯のギフトでもあります。
6.製茶の魔法の手
茶師は茶葉をやさしく攪拌し、手の力加減、攪拌する時間の長さや頻度によって、茶葉の香りを巧みにコントロールします。
もし烏龍茶の製茶室に足を踏み入れる機会があれば、まるで春の花園に迷い込んだかのように感じるでしょう。
青草の香り、豆の香ばしさ、玉蘭花、野生の生姜の花、クチナシ、蘭の花……。室内いっぱいに、芳しい香りが広がります。
茶葉は実に不思議な作物です。水分を失っていく過程だけで、香りが生まれるのです。
葉は茶樹から摘み取られた瞬間から水分を失い始め、葉を平らに広げて棚に並べる工程を「萎凋(いちょう)」と呼びます。長時間の萎凋と、茶師による適切な攪拌を経て、葉の内部では水分が何度も再分配されながら蒸散し続け、その間に激しい酸化反応が起こり、花のような香りや果実のような風味が生み出されていくのです。
製茶師の仕事とは、手で触れることで茶菁のやわらかさや硬さ、重さを感じ取り、鋭い視覚で、葉が翻る際に順調に赤みを帯びているか、傷んでいないかを見極め、さらに敏敏な嗅覚で深く香りを嗅ぎ分けながら、いま葉の酸化反応がどの段階まで進んでいるのかを丁寧に判断することです。
青臭さは残っていないか、花の香りは立ち上がってきたか、パイナップルの完熟果実のような香りが現れているか——それらを総合的に見極め、どの瞬間に高温で「炒菁」を行い、酵素の酸化反応を止め、狙った風味を“封じ込める”のか、最適なタイミングを判断します。
紅烏龍茶の製造工程には3日間を要し、香料は使わず、いかなる添加物も加えません。ただひたすら、香りを生み出す魔法のような製茶師の両手に委ねられ、台東紅烏龍ならではの甘くまろやかな余韻が生み出されます。
幸せなことに、私たちはただやさしくお湯を注ぐだけで、一杯の良質なお茶を味わうことができます。こうして、自然から茶杯へと続く「風土の旅」が、製茶師たちの手によって完成するのです。
7.三日二夜の風味錬金術:台東紅烏龍の独自製法をひも解く
2008年に誕生した台東紅烏龍茶は、鹿野高台から生まれた革新的な茶です。百年にわたる製茶の知恵と、東台湾ならではの風土を融合させ、茶業改良場東部分場・製茶師・地元茶農の三者が協力して生み出しました。当地特有の気候条件に合わせて設計されたのが、「重萎凋・重揉捻・重焙火」という独自の製茶工程です。
製茶の全工程は三日二夜に及び、ゆっくりと進む酸化によって、茶葉は花香・果香・蜜香をまといます。冷泡では甘く澄んだ香りが際立ち、熱湯で淹れると焙火由来の奥深いコクが豊かに広がり、まさに東台湾の茶文化を代表する一杯となっています。
台東紅烏龍の誕生は、単なる新しい茶種の開発ではありません。
それは、土地、時間、そして技に対する、深い敬意と情熱から生まれた応答なのです。
7-1|摘採(収穫)
台東の茶産地は北回帰線以南に位置し、熱帯性の気候のもとで一年を通して気温が高く、茶樹の生育が非常に早いのが特徴です。そのため、台湾で最も早く茶摘みができる地域でもあり、かつては他地域に先駆けて新芽が出る「早春茶」によって、市場で優位性を築いてきました。
紅烏龍の摘採基準は、一心二葉(対口葉)または一心三葉。
なかでも最良とされるのは、早朝の露が完全に蒸散した後、午前11時から午後2時の間に摘み取られる茶菁で、この時間帯に収穫されたものは「午茶」と呼ばれ、品質が最も安定し、風味も優れています。

7-2|日光萎凋/熱風萎凋
摘み取られた葉は「茶菁(ちゃせい)」と呼ばれ、まず平らに広げて日光の下に置く(日光萎凋)、あるいは熱風萎凋槽に入れ、太陽光の代わりに温風を当てる方法(熱風萎凋*によって処理されます。
この工程で、茶菁は第一段階の水分蒸散(失水)を始め、後の製茶工程に向けた重要な準備が進められます。


7-3|室内萎凋
日光萎凋/熱風萎凋を終えた茶菁を室内へ移し、竹編みの茄歴(かれき)の上に薄く広げて並べます。そのまま静かに置き、茶葉の水分をゆっくりと蒸散させていきます。

7-4|攪拌(浪菁/ろうせい)
茶菁の水分は主に葉縁から蒸散するため、一定の間隔で手作業によるやさしい攪拌が必要となります。眠っている茶菁を呼び覚ますように手で混ぜ、水分を葉柄から葉脈へと移動させ、さらに鋸歯状の葉縁から蒸散を促します。
茶師が手で茶菁を攪拌するこの作業を「浪菁(ろうせい)」と呼び、その目的は、葉柄に残る水分を再分配し、葉縁へと“走らせる”ことにあります。この過程で茶葉内部では酸化反応が進み、香りは段階的に変化していきます。

7-5|大浪(だいろう)
萎凋は一晩かけて行われる工程であり、いつ「浪菁」を行うかは、製茶師の経験と嗅覚が試される重要な判断となります。適切なタイミングで茶菁を目覚めさせ、水分をしっかりと“走らせて”(蒸散を進めて)いくことで、青臭さを取り除き、花香・果香・蜜香を引き出すことができます。
最後に行う浪菁は力強く行う必要があり、これを「大浪(だいろう)」と呼びます。伝統的には手作業で行われてきましたが、現在では温度をかけない炒菁機を用いて代替する方法も一般的になっています。

7-6|重揉捻(じゅうじゅうねん)
ここまでの工程はすべて烏龍茶の製法ですが、この段階からは紅茶の揉捻法に入ります。揉捻とは、圧力をかけて茶葉同士を擦り合わせ、葉の細胞を壊すことで、茶菁の酸化をさらに進め、香りを変化させる工程です。同時に、茶葉の内部の汁液が表面に付着し、将来の抽出性を高める役割も果たします。
また、揉捻によって茶葉は細長い条状に成形され、後工程で行う布包み団揉がしやすくなります。揉捻に要する時間は、その日の茶菁の状態に応じておよそ1~2時間です。

7-7|補足発酵(ほそくはっこう)
揉捻を終えた茶菁は山積みにして静置し、補足発酵を行います。酸化度は約80%まで進め、これは伝統的な烏龍茶より高く、紅茶(100%)には至らない段階です。葉はこの工程でさらに赤みを帯びていきます。酸化に要する時間は、茶菁に残る水分量や室内の温度・湿度によって調整され、おおよそ2~4時間です。
補足発酵は時間の見極めが非常に重要で、長すぎると魅力的な熟果香が失われ、酢酸のような刺激的でこもった雑味が生じてしまいます。

7-8|炒菁(殺菁/さっせい)
製茶師が香りと風味を確認した後、茶葉を炒菁機に投入し、高温で酵素を失活させます。これにより茶菁の活性を止め、酸化を停止させ、狙った香りをしっかりと閉じ込めます。炒菁の時間は茶師の経験によって判断され、おおよそ7~10分程度です。
炒菁を終えた茶菁は広げて冷まし、翌日の団揉(だんじゅう/布で包んで揉む工程)に備えます。

7-9|団揉(だんじゅう)
団揉の目的は、茶葉をさらに成形して締まりのある球状の外観に仕上げ、持ち運びや保存をしやすくするとともに、茶湯に厚みのあるコクを与えることです。工程としては、茶菁を布に包んで圧し固め、転がすように揉み、石のように固くなるまで締め上げます。その後、塊をほぐし、「圧し固める」「転がし揉む」「ほぐす」という作業を何度も繰り返します。
この工程を数十回、十数時間にわたって続けることで、茶菁は徐々に巻き締まり、美しい球状へと成形されていきます。
一つの大きな茶球は約30~40斤(約18~24kg)にもなり、揉茶師は力を込めて成形するため、両手に水ぶくれができたり、硬いタコができるのは日常茶飯事です。伝統的には手作業で転がし揉みを行ってきましたが、現在では「蓮花束包機(れんかそくほうき)」と呼ばれる機械が補助として用いられています。揉茶師は茶球を担いで蓮花機に載せ、足踏みペダルで回転速度を調整しながら、茶球をより緊密に締め上げていきます。
萎凋と酸化は「香りをつくる」工程、揉捻は「余韻をつくる」工程、そして団揉は「形をつくる」工程なのです。


7-10.乾燥
団揉を終えた茶葉は乾燥工程に入ります。含水量を5%以下まで下げることで、保存性を高め、品質を安定させるためです。乾燥は茶葉全体が均一に仕上がるよう、焦げや風味の損失を防ぎながら、細心の注意を払って管理されます。
乾燥を終えた茶葉は「毛茶(もうちゃ)」と呼ばれ、この段階で台東紅烏龍はほぼ完成形となります。多くの場合、茶商がこの毛茶を買い取り、それぞれの技術と狙う風味に応じて、後工程として焙火を施します。

7-11.焙煎
紅烏龍は「重萎凋・重攪拌・重焙煎」を特徴とするお茶であり、焙煎は紅烏龍の風味を決定づける極めて重要な工程です。焙茶師は目指すスタイルと自身の経験に基づき、約70〜120度の温度帯で、高温と低温を交互に使い分けながら、長時間じっくりと焙煎します。焙煎時間は20〜50時間にも及ぶことが多く、茶葉の中でメイラード反応や、わずかなカラメル化反応を起こさせることで、香ばしさと甘み、そして熟成した香りを引き出します(焦げ味は厳禁です)。
かつての紅烏龍は重焙煎が主流でしたが、近年では中焙煎で個性を表現する焙茶師も増え、焙煎による風味のスペクトラムはより広がりを見せています。焙煎は茶湯の角を取り、丸みと甘みを与えるだけでなく、茶葉の含水量を2〜4%まで下げて風味を安定させ、熟成(陳茶)にも適した状態へと導きます。

この様にして誕生した台東紅烏龍茶は、世界でも数々の認証を受賞する様になりました。
⭐️ 君玉茶園「紅烏龍 高山比賽茶」
ベルギー・ITI(International Taste Institute)国際味覚審査にて、最高栄誉の三ツ星を受賞。
⭐️ 博雅齋自然茶園(Buo-Ya Pavilion Natural Tea Company)
ベルギー・ITI(International Taste Institute)国際味覚審査にて、最高栄誉の三ツ星を受賞。
⭐️ 厚生茶園
英国「グレートテイストアワード(2025 Great Taste Awards)」にて、
1品目が二ツ星、2品目が一ツ星を受賞。
さらに、紅烏龍茶産業は新たなステージへと入っている。
台東縣政府は2024年より、紅烏龍産業のネットゼロ公正転換支援計画を積極的に推進し、茶農が製茶技術を継承することを支援すると同時に、耕作地における炭素排出量データの精緻な把握を進めてきました。本計画は今年初頭に大きな成果を結び、鹿野郷の「女兒不懂茶」「博雅齋自然茶園」「林旺製茶廠」の3事業者が先行してISO 14067の認証を取得。さらに国際認証のカーボンクレジットを組み合わせ、世界初の「ゼロカーボン紅烏龍」を実現しました。



1月6日、王志輝副縣長が自ら検証声明書およびカーボンオフセット証明書を各事業者に手渡し、台東の茶業が持続可能な道を歩み続け、清らかで気品ある自然の銘茶を淹れ続けていくことに期待を寄せました。
世界的なネットゼロの潮流に対応し、産業の脱炭素行動を後押しするため、台東県政府は国家発展委員会と連携して公正転換の取り組みを実施。あわせて環榮永興股份有限公司に委託し、県内茶農に対する包括的な支援を行っています。茶樹の栽培、圃場管理、揉捻・焙煎から、包装・物流、そして消費者のカップに立ちのぼる一筋の湯気に至るまで、すべての工程をISO 14067の国際基準に基づき厳格に算定・検証しました。その結果、今年初頭に英国規格協会(BSI Group)の厳正な審査を無事通過し、茶農は紅烏龍の生産工程における排出ホットスポットを正確に把握できるようになりました。極上の風味を追求しながら、環境持続性への責任も同時に果たしています。
最終的なカーボンニュートラルの実現に向け、実施チームはWWF(世界自然保護基金)など国際的な非営利団体が共同で立ち上げ、世界で最も厳格と評価される自主的炭素クレジット認証基準である「ゴールドスタンダード(Gold Standard)」を活用。信頼性の高いクリーンエネルギー由来のカーボンクレジットを購入して茶農に提供し、プロジェクトによるオフセットを通じて生産過程の炭素フットプリントを実質的に相殺しました。減炭の成果を茶農へ還元することで、紅烏龍は熟果の香りに加え、気候を守る深い価値を備える茶となっています。
王志輝副縣長は、「ネットゼロ排出は台東が農業を世界の最前線へ導くという強い意思の表れである」と述べました。
關山鎮の「日出禾作咖啡」に続き、台東縣政府は鹿野郷の3事業者を再び支援し、世界初のゼロカーボン紅烏龍を完成させました。これは科学的なカーボンニュートラルであるだけでなく、企業の社会的責任(CSR)を具現化した成功事例でもあります。
台東紅烏龍の香りが環境にやさしい評価とともに世界へ広がり、名実ともに「持続可能な茶郷」を実現し、一杯一杯が環境保全と地域の山河を守る温かな力となることを期待しています。
また、台東縣政府財政経済處の章正文處長は、台東紅烏龍は低海抜の丘陵茶区に由来し、自然と共生する農法によって土地が休養できる点を指摘しました。琥珀色の茶湯がもたらすトロピカルフルーツや蜂蜜の香りは、台東ならではのテロワールを象徴しています。BSIの専門審査を通じ、茶農は茶園から茶杯までの排出の要点を把握できるようになりました。この一連の仕組みは、台東紅烏龍に国際的な信頼性を備えた「グリーン・アイデンティティ」を与え、台東の茶産業が国際的な低炭素サプライチェーンへ参入するための重要な礎となります。
さらに、台東紅烏龍茶は台東縣内に留まらず、彰化のジェラート職人・趙韻嵐氏が、台東紅烏龍と彰化産ハチミツを掛け合わせ、見事に世界ジェラート大会で優勝を果たしたように、
台東紅烏龍は無限の可能性と、ほかにはない独自の魅力を秘めています。
また、台東縣政府は、4年連続で「台湾国際茶業博覧会」に参加し、「台東紅烏龍イメージ館」として、台東縣政府と12の事業者が積み重ねてきた努力と創意工夫を余すことなく紹介しています。
【昨年の展示会の模様】












台湾茶の世界に新たな希望を見出した台東紅烏龍茶。一時期、衰退期を迎えたものの、決して諦めず、そして、単に、伝統を守るだけではなく、革新的な制度の導入などで、進化をさせる。
古き良き伝統を守るためには、新しい考え、思考をそこに加味させることが如何に重要であるかを教えてくれるのが、台東紅烏龍茶ではないだろうか。
出典:台東紅烏龍茶HP 台東縣政府
写真提供:同上
この記事は台東紅烏龍茶HP、2025.11.16台東縣政府発表の内容を日本語訳し活用したものです。原文と相違がある場合は、公式サイトに掲載されている原文が優先されます。