台湾・台東県(縣)ニュース

日本人にはあまり馴染みのない東台湾・台東縣。今、台東縣では地域活性化・地方創生を成功させ、確実に成果を挙げています。その台東縣の最新ニュースをお届けします。

文化・歴史・言葉の継承から舞台、演劇を通しての創造力育成、AI、デジタル学習から宇宙教育まで。進化を続ける台東縣の教育現場

今回は、台東縣の教育現場で起こっている驚くべき、そして、感心すべき事案を一気にご紹介しよう。

 

まず、12月18日、台東縣の教育界に、また一つうれしいニュースが届いた。寧埔國小(小学校)(Salimpo アミ族山海文化実験小学校)の教師チーム――賴奕芸先生、呉慧麗先生が、「2025 持続可能な台湾・クリエイティブ授業案(2025永續臺灣創意教案)」小学校部門で最優秀賞を受賞した。

授業案『Dateng 野菜探検家―食卓にある持続可能な知恵(Dateng野菜探險家-餐桌上的永續智慧)』で、全国を驚かせた。

このカリキュラムは全86コマにわたり、児童たちをアミ族の野草文化の深い学びへと導くもの。

大地に根ざした学びにテクノロジーの革新を融合させ、子どもたちは「AI野菜トレーナー(AI野菜訓練師)」に変身。

Google Teachable Machine を活用して野草を識別するモデルを訓練し、さらに AR(拡張現実)の「野菜精霊図鑑(野菜精靈圖鑑)」を制作した。

文化・テクノロジー・アートが交差する、持続可能な学習力を見事に示したものである。

台東縣政府教育處は、寧埔國小チームの専門性と情熱に感謝を表し、今後も引き続き資源と支援を提供しながら、より多くの教師が持続可能な理念を授業に取り入れられるよう伴走していくとした。台東の教育はこれからも輝き続けることであろう。

 

次は「舞台は教室!」という話題についてご紹介しよう。

学生の芸術・人文的素養を育むため、台東縣2025学年度学生創作演劇コンクールの予選(臺東縣114學年度學生創意戲劇比賽初賽)が、12月16日に台東縣政府文化處藝文中心(センター)で盛大に開催された。

5チーム、約100名の児童・生徒が舞台に立ち、演劇を通して創造性、想像力、そしてチームワークの精神を表現した。


教育處によると、台東縣は「2026学年度に全国学生創作演劇コンクール(115學年度承辦全國學生創意戲劇比賽)」を主管開催する予定であることから、今年は初めて「ダンス」と「創作演劇」の競技を分けて実施。

大会の焦点をより明確にし、資源配置をより専門的に行うことで、学生により質の高く充実した発表の舞台を提供した。

各校の教職員・児童生徒、そして審査員チームの尽力と支援に感謝するとともに、学生たちが舞台で自己表現を学び、自信を積み重ねられる機会となった。

優勝チームは台東縣代表として全国決勝に出場する。

芸術教育が学校現場に根づき、さらに輝き続けることが期待される。


俳優が本業の記者としては、今回の「舞台は教室」というテーマは非常に嬉しく感じる。特に、全てが「創作」と言う点だ。既存の演劇を演じる場合、どうしてもオリジナル作品をイメージしてしまう。しかし、創作の場合、各役柄のイメージも子供達自身がその創造力を活かして作り上げていける。役を演じることで、今まで自分でも気づかなかった自分を見出せることもある。子供のころからこういった機会を提供する事で、創造力豊かな子供が育つことは間違いない。その創造力は、あらゆる分野で将来、必ず、活かされることだろう。

 

次のニュースは、親子、学生に一般市民も参加した職業体験イベントについて。

「2025台東地区 親子職業体験博覧会(2025台東區親子職業試探博覽會)」が12月20日、公東高工で盛大に開催された。

台積電慈善基金會、公東高工、そして台東縣政府教育處が連携して実施し、約2,000人の親子、学生、一般市民が参加した。

会場には多彩な体験ブースが用意され、家具木工、電機オートメーション、3Dプリント、デザイン制作、ビューティー・メイク、飲食実習など、子どもたちが実際に手を動かし、「つくる」体験を通して興味や適性を探ることができるようになっていた。

また、104人力銀行によるキャリア適性診断も設置され、進学や将来の方向性を整理するサポートが行われた。

さらに、農業、水産養殖、商業、冷凍・空調などの地域産業展示エリアも設けられ、企業展示と組み合わせることで、学生たちがよりリアルに職場をイメージできる内容となっていた。

台東縣政府は今後も企業との連携を進め、より多様で実践的なキャリアの舞台を整え、子どもたちが自分の未来を見つけられるよう伴走していくと述べた 。



一方、同日の12月20日、康樂国小(小学校) で、「数学×AI=数学は公式だけなんて誰が言った?」をテーマとした授業が行われた。

今回は特別に数感実験室(數感實驗室)の専門講師を招き、約100名の子どもと保護者が、AIと数学が生み出す驚きの化学反応を体験した。

今回の親子ワークショップは応募が非常に多く、約100組の親子が参加。会場は終始、活気にあふれていた。

講師陣は数感実験室および数感杯(數感盃)のチームが担当し、分かりやすく楽しい進行で、子どもたちを一歩ずつ導きながら、AI×数学の概念と詩的な言葉を組み合わせ、自分だけの新詩ビジュアル作品を完成させた。

制作の過程では、子どもたちは失敗を恐れず自由に挑戦し、のびのびと表現。保護者もそばで寄り添い、一緒に考え、驚き、親子で学ぶ喜びが会場いっぱいに広がっていた。

多くの保護者からは、「子どもがこんな発想で、こんな書き方ができるなんて本当に面白い」という声も聞かれた 。


台東縣教育處は「今後も、デジタル学習・AIリテラシー・創造的思考を育む学びの機会を継続的に推進し、テクノロジーを子どもたちが世界を探究し、自分を表現するための心強いパートナーとして活用していきます。」と述べた 。

この「数感」と「美感」の種が、台東の子どもたちの心の中で芽吹き、健やかに育っていくことを期待したい。

 

さて、次は、文化の継承教育についてのニュースをお届けしよう。

最初にご紹介するのは、民族の起源でもある言語。その継承に関する内容。

今年2月に大武國小(小学校)で南回地区リーダーズシアター(南迴區讀者劇場)が開催されたのに続き、台東縣教育處は12月17日、初鹿國小にて「2025学年度 原住民族言語リーダーズシアター大会(114學年度原住民族語文讀者劇場比賽)」を開催した。民族言語を舞台へ、そして子どもたちの日常生活へとつなげていくことを目的としている。今回の大会には、永安、太平、初鹿、建和、豊田、大南の6校から、教職員・児童あわせて40名が参加。


児童たちはアミ(阿美)語、西部プユマ(西群卑南)語、建和プユマ(建和卑南)語、ルカイ(魯凱)語などの民族言語で発表を行い、舞台は自信と笑顔にあふれていた。リーダーズシアターという形式を通して、「民族言語を話し、民族言語を使う」体験を積み重ねることで、児童は言語への自信を育む。民族言語学習はより生活に根ざし、より楽しいものとなり、文化の継承もまた、子どもたちの心の中で自然に芽生え、成長していくことだろう。


台東縣教育處は、「心を込めて運営にあたった初鹿國小をはじめ、各校の先生方、専任の民族言語教師、地域言語教育支援教師、そして保護者の皆さまの寄り添いと支援に感謝します。台東の民族言語教育のために共に力を尽くし、文化が舞台で『聞かれ』、そして子どもたちの心の中で輝き続けるよう願っています。」と述べた。

 

さらに、原住民族文化の保存と教育継承を推進するため、台東縣政府教育處は「プユマ(卑南)族民族教育データベース構築計画(建構卑南族民族教育資料庫計畫)」を推進し、初鹿・南王・利嘉などの各部落と連携。祭儀文化を核として、族語、歴史、生活の知恵、口承文化を体系的に収集し、デジタル技術を活用したアーカイブを構築してきた。

12月21日には卑南文化遺址公園にて成果発表展が開催され、文化が部落から学校へとつながる具体的な成果が披露された。

計画の実施過程では、部落の長老や言語・文化の担い手と深く協働し、貴重な民族知識を教育現場で活用できる教材へと転換。文化は「保存」されるだけでなく、「学ばれ、継承される」ものとなっています。

成果展では、族語学習教材、教具、デジタル・インタラクティブコンテンツなど、多様な民族教材も同時に展示され、教師と族人が共創してきた歩みが示された。

台東縣は、「体系的かつデジタル化された整備を通じて、学校と部落の連携を一層深め、子どもたちが学びの中で文化を知り、自信を育むことを期待しています。原住民族教育が、台東で最も温もりのある力となることを目指しています。」と強調した。


最後は、地域に根ざした宇宙テクノロジー教育の推進についてのニュース。

7か月に及ぶ宇宙滞在を終えた紅キヌアの種子は、今年4月、達仁鄉土坂 vusam 文化實驗小學で播種され、実験教育課程と結びつけた学習の中で育てられ、9月には約20グラムの第一世代「宇宙紅キヌア(太空紅藜)」の収穫に成功した。

台東縣政府は12月24日、「黑盒子.紅寶石(ブラックボックス・ルビー)」宇宙紅キヌア種子贈呈記者会見を開催し、部落から出発し、宇宙へ飛び、再び大地へと戻ってきたこの学びの旅路を共に見届けた。

台東縣縣長(知事)の饒慶鈴氏は、「宇宙紅キヌアは単なる科学実験の成果にとどまらず、文化と科学が並行して進む教育実践の象徴です」と述べた。

子どもたちは授業の中で、毎日植物の高さを測定し、成長の様子を撮影、観察日誌を記録。実際のデータと長期観察を通して、宇宙環境が作物の生育に影響を与えるのかを探究し、学びを大地に根付かせながら、宇宙へと広げていった。


教育處はあわせて、今後の宇宙教育推進方針を始動。今年の夏休みには、臺東女中(高校)と臺東高中(高校)が合同で代表チームを結成し、「2025台湾カップ・ロケット競技大会(2025臺灣盃火箭競賽)」に出場した。

地域文化と科学原理を融合させた創作作品「MaBengBeng」は、大会特別賞を受賞した。

来年(2026年)、台東縣政府は「第1回 台東学生硝糖ロケット大会(臺東第一屆學生硝糖火箭比賽)」を開催予定で、同時に教員向け宇宙ロケット科学ワークショップも企画。実作を通じて、物理・ロケット推進・宇宙科学分野における教員の指導力を高めていく。

あわせて、國家太空中心(国家宇宙センター)が台東縣南田村に宇宙教育館(太空教育館)を設置し、段階的に充実した宇宙教育カリキュラムの構築を進めていく。

 

今後は、教育・農業・産業の力を結集しスマート農業、食農教育、文創(カルチャー×デザイン)応用を推進。「紅キヌアが宇宙へ、宇宙が台東へ帰る」という中核ストーリーを形づくり、台東の物語が大地から宇宙へ、そして宇宙からふるさとを見つめ直す――より強靭で持続可能な未来へと歩んでいく。

また、達仁郷の農家・呉正忠さんが、宇宙紅キヌアの“子孫”を引き続き増やしていく。将来的には認証を取得し、文創(カルチャー×デザイン)やブランド化と結びつけ、多様な商品展開を目指す。


≪宇宙紅キヌア豆知識≫

宇宙環境が植物に与える影響を研究するため、国家宇宙センターは、台湾紅キヌア、ミニ胡蝶蘭、ピーマン、ヒマワリの4種類を選定。

2019年末、日本が推進する「アジア種子宇宙輸送計画」に参加し、7か国・14種類の作物種子とともに国際宇宙ステーションへ送られ、約7か月滞在後、地球へ帰還しました。

 

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今年台湾は、台湾初の宇宙探査ロケットの打ち上げに成功した。

へき地である台東縣は、デジタル、AIのみならず、宇宙、ロケットの教育にも力を注いでいる。

 

今回の記事でもお判りの様に、台東縣の教育現場では最先端技術の教育のみならず、伝統、文化、歴史教育をも大切にしている。

しかも、教える側主導ではなく、子供達が自ら考え、創造する教育に力を注いでいる。

台湾は日本以上に受験戦争は激しい。全国一斉に統一試験が開催され、上位から順番に希望校を選択出来る。そのために、少しでも成績をあげるために、ほとんどの子供が塾に通っている。

その様な環境の中でも、単に、受験のための授業、受験のための勉強だけではなく、将来、実践的に活かせる教育も行っている。その最たるものが英語だろう。受験英語ではなく、実践的英語教育。

最先端技術も、机上の授業だけでなく、実践的な授業も行っている。日本ならば、高専に行かなければ学べない内容も、子供のころから身近に感じられる様に工夫されている。さらに、何度も述べて恐縮だが、自分達の地域の文化、歴史、習慣も体現できる教育を実践している。

今回の記事をお読みなって、読者の皆さんが、台東縣の教育についてどの様な感想を持たれるかは判らないが、記者は少なくとも、今後の日本の教育改革に必要となるヒントがそこに見出せるように感じた。

 

出典:台東縣政府、台東縣政府教育處

写真:同上

この記事は2025.12.18,20,23,24台東縣政府教育處発表の内容を日本語訳し活用したものです。原文と相違がある場合は、公式サイトに掲載されている原文が優先されます。