東台湾・台東縣がスマート教育、社会生活のデジタル化に力を注いでいる事はその事例を今まで何度かご紹介してきた。
新しい技術を素早く導入し、尚且つ、その新しい技術に関して、高齢者を取り残さないという取り組みについてもご紹介してきた。
と、同時に、台東縣の歴史、文化、慣習、習慣を決して忘れる事なく、伝承していく取り組みも同時に行われている。
更にまた、これら新しい技術、伝統、文化、歴史を世界に向けて発信すると共に、積極的に外部からの情報を取り入れるという姿勢が台東縣にはある。
例えば、2014年、台湾南部・高雄市に財團法人高雄市藝起文化基金會が設立された。この基金會は、芸術祭と交流のプラットフォームの構築を専門とする台湾初の基金であった。2014年、基金は高雄に自由な創作の場を提供したいという思いで発起人たちが集まった。
当時、台湾南部で作品を発表・展示する機会を確保することは、特に場所や資金面で非常に困難であった。そこで、高雄で自由で活気のあるミニアートフェスティバルを創設することを決意。アーティストに創作とパフォーマンスのためのアクセスしやすいプラットフォームを提供し、台湾南部の若い創造的エネルギーを結集し、地元の芸術家が「貧しくない」ものになることを目指した。
そして、その願いは大きく前進し、今では、アジアの優れた作品を世界に発信することを目的とした、Asia Base(Asia Base亞洲微型表演藝術平台計畫)へと繋がった。
これは、アジア美術を中心とした国際巡回プラットフォームです。今年は、台湾と香港の選りすぐりの作品がローマ、英国のエディンバラ・フリンジ・フェスティバル、そして日本の糸島国際芸術祭を巡回し、10月26日に盛況のうちに閉幕した。
糸島国際芸術祭では、臺東聲音藝術節(台東サウンドアートフェスティバル)創設者の張溥騰氏が招待され参加した
張溥騰氏は、「台東と糸島はどちらも豊かな自然景観を有していますが、音の風景には大きな違いがある」と述べ、「火山的聲音展(火山の音展)」では、人々に目を閉じ、大地の奥深くに脈打つ鼓動とエネルギーを感じ取っていた。
また、聲音藝術家の張君慈氏は、Wanderer Project(放浪しながら芸術作品を作り出すプロジェクト)で昨年、日本を訪れ、海を渡って台湾に流れ着いた火山性軽石の起源を探った。今回は糸島加布里灣の海岸で、再び日本に戻ってきた軽石を採取し、ラジオチューナーを使って波と共鳴させた。
2週間にわたるこの芸術祭は、世界中からアーティストを集めただけでなく、芸術創造のより多様な可能性を高めた。
この貴重な経験とそこで起こった素晴らしい出来事の数々を、台東縣民と共有したいという事で、11月30日に「臺東聲音藝術節 × Asia Base在糸島國際藝術祭分享會」が入場無料で開催された。
当日は、江佳蒨氏の「『私』から『私たち』へ:糸島国際芸術祭における越境交流(從「我」再到「我們」的糸島國際藝術祭跨國交流)」の講演から始まり、張溥騰氏の「糸島、地下から鼓動を感じる(在糸島感受來自地底的心跳)」、張君慈氏の「周波数を合わせる:浮石ラジオ ― 糸島シグナル(調頻中:浮石電台——糸島訊號)」が披露され、続いて、吳維緯氏 × 達姆拉‧楚優吉氏による「『アート』から国際舞台へ(從『藝術 』串到國際)」の対談、そして最後は、全員での討論会を行った。


また、歴史、伝統を伝承するという活動では、「文化遺産美学講座:台湾の先住民族建築と住居文化(文資美學講座|台灣原住民建築及居住文化)」が12月11日に台東縣政府において、 南島語族建築(オーストロネシア建築)研究の第一人者である關華山教授を招き、建築人類学の視点から、台湾先住民族の多様な建築形態、生活空間、そして社会文化的側面の相互関係についての講演が行われる予定となっている。参加者は、現地調査、フィールドワーク、史料の活用を通して、各民族の山林における文化的含意、世界観、そして自然と共生する知恵を、包括的に再理解することができるようになっている。

さらに、12月10日には、岡山県西粟倉村に拠点を置いて、日本全国の中小企業ブランディングデザインを行っている鈴木宏平氏と二酸化炭素ゼロ”の 佐賀県発ローカル・ブランドをコアバリューとしているSAGA COLLECTIVEの最高執行責任者である山口真知氏を招き、、「デザインは地域をどのように変革できるか」について、ブランドマネジメントからサステナビリティ戦略まで、実社会のケーススタディを用いて講演を行う予定となっている。
Local Design の第一線で活躍する日本の実践者を台東まで招き、その知見を共有し、「面倒だけど大きなインパクトのあるローカルな実践」に焦点を当てた2つのデザインセミナーを行うのである。

鈴木康平氏は、長年にわたりデザインを通して地域と関わり、農産物のパッケージデザインや工芸品のリノベーション、古民家のリノベーションなど、プロダクト、空間、ビジネスを横断した統合的なアプローチを実践している。本講演では、都市から地方へと活動の場を移した鈴木氏が、自らの原点に立ち返り、地域特性を起点としたデザインが、持続可能な地域ブランドのリズムをどのように構築していくのか、自身のデザインファーム「nottuo」と地域ブランド「点々」の実例を通して語る予定となっている。


山口真智氏は、産業の統合、廃棄物の削減、そしてカーボンニュートラル戦略の実践を通して、日本初の「すべての製品が脱炭素化」された地域ブランドを創出した経緯について語り、また、世界的なサステナビリティムーブメントの中で、小さな町がブランディングとデザインを通してどのように国際的な認知度を高めていくかについても講演する予定になっている。


大人たちの芸術、文化、歴史、デザインといった分野のみならず、子供達に対しても、芸術性を育む取り組みを台東縣では行っている。
台東の情熱を体現し、全国舞台を目指す新進アーティストの育成である。
11月29日、30日の両日、臺東縣政府教育處主催で、「2025年度学生ダンス・創作演劇コンクール予選(114學年度學生舞蹈暨創意戲劇初賽)」が行われた。
16の個人部門と22の団体部門に分かれ、合計378名の出場者が台東代表として全国決勝に挑んだ。
コンクールは小学生による個人古典舞踊のパフォーマンスで幕を開けた。優雅な動きと文化的な魅力で、物語と感情を鮮やかに伝えた。続いて団体パフォーマンスが披露され、シンクロナイズドジャンプや宙返りなど、チームワークと努力の成果を披露した。















創作演劇コンクールは12月16日に芸術文化センターに会場を移し、5つの小中学校が音楽、照明、表現を融合させた、分野を超えた演劇作品を披露することになっている。
俳優と言う仕事をしている記者としては、創作演劇コンクールに非常に興味を持っている。単なる演劇だけではなく、音楽、照明といった分野も加味しての審査と言う点が非常によく考えられていると思う。
日本では、東京一極集中により、例えば、関西方面では、音響、照明、カメラマンといった技術者(職人)が育っていない。これは、非常に大きな問題である。
地方、しかも、辺鄙な場所に位置する台東縣ではあるが、台東縣政府(県庁)の取組は非常に多岐に渡っており、多方面での人材育成が着実に行われている。
教育現場、産業界、芸術界、福祉介護界といった、一見、全く別の世界の様だが、全てが一本の線で結ばれており、どの点が欠けても地域活性化、地方創生は成し得ないという事を台東縣政府は承知している。
そして、どの世界に対しても、手を抜くことなく、積極的、戦略的に取り組んでいる。
記者は37年間、台湾で生活をして来たが、正直、台東縣がここまで優れた地域であることを知らなかった。
来年以降は、定期的に台東県を訪問し、実際に自分自身で様々な分野を取材していきたいと思っている。
尚、私事で恐縮ですが、明日から1週間、撮影があるため、本投稿はお休みさせて頂きます。12月8日より、投稿を再開する予定です。
出典:臺東縣政府文化處、台東縣政府教育處
写真:同上
この記事は2025.11.21、28臺東縣政府文化處、2025.11.29台東縣政府教育處発表の内容を日本語訳し活用したものです。原文と相違がある場合は、公式サイトに掲載されている原文が優先されます。