インバウンド需要が急増している日本。ハード面では様々な設備が整っているが、ソフト面ではどうだろうか。
ソフト面で特に重要視されるのが、語学である。世界の共通語となっている英語での対応がどこまで可能となっているのだろうか。
今は、京都、大阪、東京等々に集中しているインバウンド客を地方にも分散させようと言う動きが活発になっており、日本の地方行政もインバウンド客の誘致に必死ではあるが、受け入れる前にまず必要な事はどの程度のバイリンガル人材が育っているかという事ではないだろうか。
確かに、今は便利なアプリがあるが、アプリ頼りだけでは、伝えきれない部分、さらには、観光客とのコミュニケーション不足が生じ、その結果、折角、多額の予算を投じてインバウンド客を誘致しても、外国人観光客の満足度は挙がらず、逆効果を生み出す結果にもなってしまう。
立場を変えて考えて欲しい。記者が花蓮縣に住んでいる頃、観光ガイドをしていたが、事前に、日本のお客様からの問い合わせで多かったのが「日本語通じますか」「英語は通じますか」であった。
言葉が通じれるか通じないかは、観光客にとっては非常に重要なポイントとある。
台東縣政府では、臺東縣政府國際發展及計畫處という部署がある。2020.05.05に同處のFacebookが開設されている。
また、「臺東縣英語人才培訓計劃(台東県英語人材育成プログラム)」が今年から始まった。
「臺東縣英語人才培訓計劃」とは、2026年の「臺東博覽會」開催に向けて、台東縣の観光サービス業者や国際ボランティアなど、英語での国際的な接客能力を高めるための研修プログラムである。


この計画は、英語での接客、文化案内、異文化コミュニケーションといったスキルを向上させ、台東をより国際的な都市にすることを目指した計画として実施されている。
主な目的としては、
①観光客の接客能力向上
観光サービス業者や小売店、飲食店などの英語対応能力を高め、国際的な観光都市としてのイメージを向上さる。
②国際的なボランティア育成
「国際ボランティア英語導覽培訓課程」などを通じて、専門的な研修を受け、文化的な背景知識と英語を活かせるガイド人材を育成する。
③異文化理解の促進
英語を学びながら、台東の文化や工芸品への理解を深め、観光客との交流を円滑にする。
このプログラムの特徴としては、
①実践的な内容
迎賓、接客、商品案内、支払い対応など、実際の現場で役立つ対話練習を重視。
②先進的な学習ツール
AI言語学習プラットフォーム「Speak」を導入し、AIによる発音練習や、個々の業務内容に合わせたシミュレーション練習を可能にしている。
③多様な研修コース
国際ボランティア向けのコースのほか、観光業、小売業、交通業など、様々な業種を対象としたテーマ別の小規模クラスが実施されている。
④専門家による指導
外国講師、国際的な接遇経験者、文化クリエイティブブランドの代表、専門ガイドなどが講師を務めている。


台東縣英語人材育成プログラム(臺東縣英語人才培訓計畫)は、地域商業地区の育成に継続的に取り組んでおり、今年(2025年)は、都蘭のコーヒーショップ「「達卡兒陶甕咖啡」や台湾の美食プラットフォーム「500輯」が主催する、地元の人々の視点を取り入れた台湾小吃(B級グルメ)のアワード「500碗」に選出された「臼部廚房」、10年以上続く人気民宿「「星棧101民宿」など、多くの店舗で英語対応とバイリンガル研修を実施している。
現場でのOJT研修、一般的なサービスフレーズ等のトレーニング、料金表や交通誘導、安全情報などのバイリンガル表示、店舗ウェブサイトやソーシャルメディアでのバイリンガル情報開示など、このプログラムは、外国人観光客が店舗検索から入店までスムーズにコミュニケーションを取り、安心して買い物ができるよう、店舗が「話せる・見える・検索できる」環境を整備する支援を行っている。
台東縣政府が台東縣英語人材育成プログラム(臺東縣英語人才培訓計畫)に力を注いでいる背景には、来年の臺東博覧會開催と同時に、国際観光の回復に牽引され、外国人観光客が台湾を訪れる傾向が増加している事が挙げられる。観光局の観光統計データベースによると、2024年に台湾を訪れた観光客は785万7686人に達し、2025年1月から8月までの台湾を訪れた観光客の累計は545万6568人で、前年比9.8%増となった。今年上半期の累計観光客数も419万7000人を超え、前年同期比で約10%増加した。これは、国際市場の勢いが継続し、外国人観光客の割合が増加していることを示している。
台東の企業にとって、バイリンガルサービスは観光客へサービス向上とコミュニケーションの向上につながり、その結果、消費もアップするという重要なキーポイントと考えている。
実際、「都蘭達卡兒陶甕咖啡」のオーナーによると、外国人客の割合が全客の約50%にまで増加したことも明かした。店内のサービスフレーズや主要商品のバイリンガル表示により、注文のコミュニケーションがより効率的になり、リピート客の増加とソーシャルメディアでの評判も向上している。
実際、「都蘭達卡兒陶甕咖啡」のオーナーによると、外国人客の割合が全客の約50%にまで増加したことも明かした。店内のサービスフレーズや主要商品のバイリンガル表示により、注文のコミュニケーションがより効率的になり、リピート客の増加とソーシャルメディアでの評判も向上している。
英語人材育成プログラムでは、現在、「必要な時にいつでも」使える英語対応スキルを迅速に習得できるよう支援することに重点を置いていると指摘した。このプログラムは、シンプルで再現性の高いツールキット(サービスフレーズ集、看板・メニューテンプレート、オンライン情報開示リスト)と現場での実践を通して支援する。また、評価対象となった企業を「バイリンガルフレンドリー(雙語友善)」ネットワークに繋げ、将来的には「バイリンガルフレンドリービジネスマップ(雙語友善店家地圖)」に掲載することで、外国人観光客への誘致ルートを容易にし、滞在の質を向上させることを目指している。










英語人材育成プログラムの委託機関は、現在、企業が「必要な時にいつでも」使える英語対応スキルを迅速に習得できるよう支援することに重点を置いていると指摘した。このプログラムは、シンプルで再現性の高いツールキット(サービスフレーズ集、看板・メニューテンプレート、オンライン情報開示リスト)と現場での実践を通して支援する。また、評価対象となった企業を「バイリンガルフレンドリー(雙語友善)」ネットワークに繋げ、将来的には「バイリンガルフレンドリービジネスマップ(雙語友善店家地圖)」に掲載することで、外国人観光客が台東縣を訪問先として選びやすくし、滞在の質を向上させることを目指している。
英語人材育成プログラムは、地元企業への定期的な指導を毎年継続して実施している。来年も4月に説明会を開催し、参加登録を開始する。
英語人材育成プログラムは、地元企業への定期的な指導を毎年継続して実施している。来年も4月に説明会を開催し、参加登録を開始する。
台東縣政府は、2026年臺東博覽會(台東万博)開催に向け、「英語人材育成プログラム」の推進を強化している。台東縣国際ボランティアチーム(臺東縣國際志工)および台東製糖工場文化創意産業園区のガイド(臺東糖廠文化創意產業園區導覽解說員)と連携し、「国際ボランティア英語ガイド養成コース(國際志工英語導覽培訓課程)」を共同で実施している。
専門的な研修と現地での実践を通して、国際的なホスピタリティスキルを備えたボランティアガイドを育成し、台東の豊かな文化遺産と国際的な魅力を発信することを目指している。
実施例としては、10月中旬、参加者と台東縣政府国際ボランティアが、製糖工場の歴史と、製糖産業の中心地から文化拠点へと変貌を遂げた経緯を学んだ。また、「向日葵藍染文創」ショップのガイドツアーにも参加し、園区内の多様な文化創造産業への理解を深めた。さらに、コースには英語ガイドのスキルアップも組み込まれており、参加者は台東の地元の工芸品や文化精神に触れながら、英語表現を学ぶことができた。
このコースは、外国人講師、国際儀礼親善協会(國際禮賓親善協會)の講師、文化・クリエイティブブランドの代表者、そして台湾糖業文化トレイルの専門ガイドが共同で指導した。
内容は、ガイドツアーの英語運用、異文化コミュニケーションスキル、国際的なホスピタリティエチケット、状況シミュレーション演習、そして実践的なガイドツアー実習など。実践的なガイドツアーとバイリンガルによるインタラクティブな演習を通して、参加者は語学力を向上させるだけでなく、自信に満ちたプロフェッショナルな国際コミュニケーション能力を育んだ。





台東縣政府は、「台東製糖工場文化創意産業園区(臺東糖廠文化創意產業園區)は県の重要な文化拠点の一つであり、英語人材育成プログラムとの連携は、語学力と文化の奥深さを兼ね備えた地元のボランティアガイドチームを育成することを目的としている。縣政府は今後も、地元の文化施設とクリエイティブブランドを連携させ、英語ガイド養成コースを継続的に開催し、台東を国際親善と文化融合のモデル都市にしていく。」と述べた。
台湾の地方自治体がバイリンガル政策を実施する際、多くの県市が台東縣を例に挙げ、参考にしている。
近年、台東縣は台湾国際熱気球フェスティバル、国際トライアスロン大会、台湾国際サーフィン大会など、多くの大規模国際イベントを開催し、国内外の多くのアスリートや観光客を魅了している。
台東縣政府としては、将来的な展望として、縣内の文化的な観光地と文化創造ブランドを連携させ、今後も継続的に英語ガイドの育成に力を入れていく。「臺東縣英語人才培訓計劃」は、台東が国際的で文化共融の模範的な場所となることを目指していると述べた。
さらに、台東縣政府は国際交流の機会を増やすためのイベントの開催、参加にも力を注いでいる。
その評価は高く、多くの国際機関から認められ、提携関係を築いている。例えば、ワールドサーフリーグ(World Surf League :WSL)は2017年に台東と協定を締結し、ワールドカップサーフィン大会の開催権を獲得した。これは、台湾でサーフィンの世界選手権大会が開催された初めてのケースとなった。
台東縣政府國際發展及計畫處處長余明勳氏は、縣内の様々な国際化政策の実施を担当しており、「台東では国際イベントの開催が長年の慣例となっている。重要なのは、外国人にとって台東が円滑なコミュニケーションの場であると感じてもらうための、より包括的な対策を構築することだ」と指摘した。この点に関して、台東縣政府は過去2年間、外国人観光客の受け入れのために国際青年団を募集してきた。今後は国際ボランティアモデルを導入し、年齢制限を緩和し、より多くの人々に国際交流への参加機会を提供する計画だ。」と述べた。
台湾政府が打ち出す「バイリンガル国家政策発展青写真2030(2030雙語國家政策發展藍圖)」では、需要側からの英語力強化が重視されている。台東縣政府は、多様なニーズに応えるため、国際人材育成政策を策定。2016年から毎年、飲食、宿泊、小売、公共交通機関など、様々な業種を対象に研修を実施し、台東を英語で紹介する方法、職場で遭遇する可能性のある状況会話のシミュレーション、基本的なフレーズなどを教えている。
台東縣政府は、企業向けに包括的な計画を策定し、英語服務標章(英語サービスマーク、English Service Mark)*1の取得支援やバイリンガル環境の構築支援などを提供し続けている。これには、バイリンガルの看板、バイリンガルのサービス手順の作成、バイリンガルメニューや販促資料の翻訳、英語のポケットブックや英会話学習パッドの作成などが含まれている。
台東縣政府の調査によると、2016年に英語研修・指導を実施して以来、企業の英語能力は50%も向上した。2017年には、台東縣政府が合計134の企業に指導を行い、そのうち37の企業が外国人とのコミュニケーションを通訳なしに行えるようになり、英語サービスマークの金賞を受賞した。また、73の企業は、簡単な補助ツールを用いて優れたサービスを提供したことで、銀賞も受賞した。現在までに、300以上の企業が英語サービスマークを取得している。
余明勳氏は、「英語対応の店舗を多数設置した後は、ラインやエリアを拡大し、英語ツアーの手配も進めることができる。国際的にフレンドリーな環境を構築することは好循環だと考えています。外国人がサービスに満足すれば、自然と友人にも勧めたくなるでしょう。交流の過程で、店舗側も自分の英語力の不足に気づき、英語力を向上させようという意欲が高まるのです。」と述べた。
さらに、台東縣政府は、全国的な英語学習の潮流を促進するため、公共空間の標識の誤りを訂正し、英語の誤り訂正の専門家となるよう一般市民を募るなど、誰もが参加できる様々な活動を展開している。縣内で見つけた誤った英語の標識をアップロードし、正しい綴りを提案するだけで、報酬を受け取ることができるようになっている。
さらに、台東縣政府のアプリ(TTPush)を活用し、英語のアンケートやクイズを配布した。これにより、市民は台東の特徴を知り、各部門が推進する情報や施策を簡単な英語で理解することができる。
さらに、英語学習のモチベーションを高めるため、台東のデジタル通貨である台東金貨(TTCOINS)の還元も行った。TTCOINSはポイント還元型のイベントで、台湾の地方自治体がデジタル通貨を発行するのは今回が初めて。10枚のTTCOINSを集めると、新台湾ドル1元に相当する。市民は、このコインを使って提携店舗で商品を購入したり、駐車料金を直接支払ったりすることができる。
余明勳氏は笑いながらこう言った。「クイズと金貨を配るイベントは、いつも完売です。政府からすれば、これは情報発信の場です。人々はお金を稼ぎ、政府の取り組みを理解できます。金貨を受け取った人はそれを使ってくれるので、店の売り上げも上がります。それは私たちにとっても嬉しいことです。」
バイリンガル政策を推進する上で、政府や地方自治体が主導的な役割を果たすことは非常に重要である。
最初に述べた様に、インバウンド客を増やしたいならば、バイリンガルな人材を増やすことが重要であるが、日本の場合、「教育」という政策への予算は減少の一途を辿っている。
「教育」の重要性を再度、見直すと共に、政府、行政にのみ頼るのではなく、コミュニティ単位、業界単位での取り組みも必要ではないだろうか。
先日も述べたデジタル化同様、誰も取り残さない政策、手法が必要である。
そして、単に語学能力を向上させるだけでなく、相手方の習慣、マナー等もしっかりと学んでおく必要がある。
記者も、永年の台湾生活で、握手、ハグというものには全く抵抗が無くなったが、日本に戻ってから、この習慣が自然と出てしまったため、日本人から驚かれたケースも度々あった。
インバウンド客を誘致するために、皆さんの地域ではどの様な工夫がなされているのか、今一度、チャックする機会になれば幸いです。
*1 英語服務標章(英語サービスマーク、English Service Mark)は、台湾政府が推進する「2030年バイリンガル国家政策」の一環として、英語での応対能力や標識・表示の多言語化を推進するために設けられた認証制度です。
これは、台湾を訪れる外国人にとってよりフレンドリーで国際的な環境を整備し、観光やビジネスの利便性を高めることを目的としています。
≪概要≫
目的: 外国人が言語の壁を感じることなく、台湾での生活、観光、ビジネスを快適に行えるようにすること。具体的には、公的機関や民間の事業所における英語対応能力の向上を目指します。
対象: 政府機関、公共交通機関、観光地、ホテル、レストラン、店舗などの様々な公共・民間サービス提供者。
認証基準: 英語での案内の提供(標識、メニューなど)、スタッフの英語応対能力など、特定の基準を満たした事業所や機関に対して、レベルに応じた「英語服務標章」が授与されます。
主管機関: 政策全体の主管は国家発展委員会(National Development Council, NDC)ですが、具体的な認証プログラムは中国生産力センター(CPC)などの機関が実施しています。
この制度により、英語が堪能でない外国人でも、マークのある場所では安心してサービスを受けられるようになっています。
出典:台東最速報、中央社、臺東縣英語人才培訓計劃、臺東縣政府國際發展及計畫處
写真:同上
この記事は2025.10.31中央社、2025.11.21台東最速報及び臺東縣政府國際發展及計畫處、臺東縣英語人才培訓計劃発表の内容を日本語訳し活用したものです。原文と相違がある場合は、公式サイトに掲載されている原文が優先されます。