台湾・台東県(縣)ニュース

日本人にはあまり馴染みのない東台湾・台東縣。今、台東縣では地域活性化・地方創生を成功させ、確実に成果を挙げています。その台東縣の最新ニュースをお届けします。

台東スローフードを国内外に広く認知させ、地域活性化、地方創生に活かす

台東縣の指針は「慢經濟(Slow Economy)であることは今までにも何度か紹介した。

この「慢經濟」の一つとも言えるのが、「台東慢食節」である。

台東慢食節とは、台東縣で開催される、地域の伝統的な食文化を祝う食文化イベント。

国際的なスローフードの考え方に基づき、「おいしい、きれい、公平な食」をテーマに、地元産の食材や旬の味覚を通じて、台東の豊かな食文化を国内外に発信するものである。

台東慢食節の目的は、観光振興に加え、地元の食文化の価値を高め、飲食店に環境保全や脱プラスチックなどの取り組みを促すことにある。

具体的には、地元シェフや飲食店によるスローフードマーケット、品評会、産地を巡るスローフードトリップなどを開催。

旬の食材を使った料理や飲み物を、心地よいペースで楽しめるように提供する。

地域固有の風土や食文化、食材の生産者を深く体験できる機会を提供するというものである。

特徴としては、地元の人々が食文化を再認識するきっかけにもなり、台東のライフスタイルを代表するブランドとして定着しつつある。

国際スローフード運動の理念に基づき、持続可能性と公平性を重視している。

2017年に始まり、2021年には日本のグッドデザイン賞を受賞している。

 

​山から海まで、部落から市街地まで、今年の「スローフードチャント」には、崁頂布農古謠班、以莉・高露、電光部落歌謠隊、馬樂Madal與Tahidang待浪樂閱青年傳唱隊、ABAO阿爆、那屋瓦團隊……等々の最強のラインナップが揃った。

彼らは12月に、台湾南部の高雄駁二藝術特區 大義公園で、朝から晩まで、台東の素晴らしい歌声でお祭り気分を盛り上げながら、台東縣のスローフードスローフードから誕生する芸術作品を紹介することになった。

期間は、12月6日(土)が、15:00-21:00まで、12月7日(日)が14:00-20:00までとなっている。

​スケジュールは、

12/6(土)15:00-15:20

崁頂布農古謠班

​ブヌン(布農)族の伝統的な八部合唱団で、部族の季節ごとの風習や生活のリズムを、清らかな歌声で歌う。

植林や狩猟から生贄の儀式まで、彼らは山や森の思い出を歌で紡ぎ、自然と調和して生きることへの畏敬の念を表現する。

 

12/6(土) 16:30-16:50

以莉.高露 Ilid Kaolo

​以莉・高露(Ilid Kaolo)は、優しくも力強い歌声で、日々の暮らしを歌い上げる。

黄金色の稲穂に降り注ぐ陽光、太平洋を渡る風のように、彼女の歌声は明るく澄んでいる。田園風景から海の潮騒まで、彼女の歌は多岐にわたり、山海の自然のエッセンスが、それぞれの歌に花開く。

 

12/7(日)14:00-14:20

電光部落歌謠隊

​3世代にわたる電光部落歌謠隊は、祖先から受け継がれてきた歌を披露する。

歌や踊りを通して、彼らは自分たちの言語、文化、そして土地の名前を紹介する。50年、60年もの間忘れ去られていた歌が、スローフードのステージで再び歌われるのである。

 

12/7(日)15:00-15:20

馬樂MadalX Tahidang 待浪樂閱青年傳唱隊

​馬樂(Madal)は、アミ(阿美)族の文化を守るために活動を続ける若きアミ(阿美)族の音楽家

部族の言葉で「招待」を意味するTahidangは、人々に大地に耳を傾けるよう、まるで波の音のように呼びかける。

彼らは古い旋律を現代的な作品へと昇華させ、メロディーを通して部族の日常生活と存続を伝える。

単なる音楽演奏ではなく、長年にわたり部族の伝統歌を集めてきた馬樂(Madal)は、演奏後半にそれらの歌も披露する。

12/7(日)19:30-20:00

Abao阿爆(阿仍仍) feat. 那屋瓦

​阿爆(阿仍仍)のパイワン(排灣)語アルバム『kinakaian 母親的舌頭(母語)』は、金曲賞の8部門にノミネートされた。

アルバムの楽曲はまるで母の優しい言葉のように、この土地の豊かな言語への感謝を促し、美しい昔の民謡を再び耳にすることができる。今回、阿爆(阿仍仍)は才能溢れる那屋瓦團隊を率いて、フェスティバルを大いに盛り上げることであろう。

 

台東では、食材の採取は日常生活に欠かせない要素です。

人々は、団子を包むためのナツメを摘んだり、椀物に使うためのココナッツの殻を集めたり、野草や果物の皮を煮て日用品の石鹸や染料を作ったりしている。

野生の素材は余すことなくあらゆるものに加工され、生活の一部に取り込まれている。

台東スローフードフェスティバルでは、食材の採取は食卓だけにとどまらない。

それを紹介するのが以下のブースである。

 

獨樹依織 unique tapa/樹皮布創作工作室は、コウゾの樹皮から織物を制作している。繊維を引き裂き、浸し、叩くという複雑な工程を経て、コウゾは弾力性と光沢を帯びるようになる。

コウゾは、沿岸部の南島民族の人々にとって重要な植物。戎依(ロン・イー)の作品はバンコク、北京、東京、フランスで展示され、作品を通して島の伝統、文化を様々な場所に届けている。

 

都蘭足渡蘭/鄉村.裸製皂(石鹸)/ビンロウの実、タバコ、キビ酒、コウゾ、海塩を原料に、精製と冷製により植物の栄養を閉じ込め石鹸。香りと洗い心地は、まるで自然が呼吸をしているかのよう。

 

一粒工作室 / iliworkshop月桃花の葉を編んで作品を制作している。繊維の方向、収穫時期、そして乾燥や湿気の変化によって、完成品にはまるで植物が自ら書き記したように、様々な線が生まれる。

 

農來走走/藍染めの作品を制作している。染料槽は日光や水温によって常に変化し、色の濃淡は予測不可能。そのため、作品の奥深さには時間の影が刻まれている。

 

The coconut woman (椰女郎)/海岸でココナッツの葉と殻を集め、殻を剥ぎ、形を整え、磨き上げ、彼女達によってボウルや皿へと変化さる。普通は廃棄される殻に新たな息吹を注いでいる。

 

この様に、スローフードフェスティバルでは、単に、地元の料理を紹介するだけではなく、「収穫は料理の源であり、職人技の原点」を体現させる。

そこに、伝統的な踊りや歌が融合する事で、台東のあらゆる文化を広く紹介する事になる。

 

台東のスローフードの紹介は台湾国内のみならず、世界に向けての発信されている。

その一つが11月19日から23日までフィリピンで開催されている第一回Terra Madre Asia & Pacific 2025 ~FROM SOIL TO SEA~ A Slow Food Journey Through Tastes & Traditionsへの参加である。

フィリピンのネグロス(Negros)島の首都バコロド(Bacolod)で開催さている第一回Terra Madre Asia & Pacific 2025の開会式は感謝の祈りで始まり、出席者全員が立ち上がり土地への敬意を表すことから始まった。

Terra Madre Asia & Pacific 2025は2年前に構想・準備され、アジア太平洋地域における共通の食料問題と環境問題に焦点を当て、類似した地理的条件に基づいた共通の解決策を見出すことを目指している。

第1回イベントには、小規模農家、漁師、原住民族のリーダー、若者、シェフなど、25カ国から2,000人以上の参加者が集まった。

 

今年のテーマ「土から海へ(From Soil To Ocean)」は、食卓から大地まで、食のルーツに立ち返り、食卓から大地まで、あらゆる問題を探求するきっかけを与える事が大きな目的とされている。気候変動が深刻化する現代において、生物多様性を育む回復力のある環境を作り

(Resilient Environment)スローフードを実践することの重要性と意義を訴えている。

 

台東縣縣長(知事)饒慶鈴氏が率いる「臺東慢食代表隊」は、狩猟者、食用植物採取の達人、釣りと狩猟の知識を持つシェフそして生産者たちが参加した。さらに、台東の様々な原住民、ブヌン(布農)族、パイワン(排灣)族、ルカイ(魯凱)族、プユマ(卑南)族、アミ(阿美)族の文化実践者も参加した。

台東の山、川、海の恵みと部族の知恵を国際舞台に届けようと、準備万端でバコロド(Bacolod)に乗り込んだ。イベント期間中は、様々なパフォーマンス、フォーラム、料理交流ワークショップなどを通して、台東が10年間培ってきたスローフードの豊かさを世界と共有する。

 


「Slow Drinks(スロードリンク)」展示エリアでは、海端崁頂部落の蓋亞那工作坊の胡郁如(Ibu)氏が、ブヌン(布農)族の人々が地元の知識を活用した伝統的な野生のハーブを収集し、お茶として加工する方法を紹介し、「山や森から採取し、それを食卓で使う」という持続可能な生活哲学を体現した。

 

成功旗遇海味の主理人の林昱濱氏は、日本のスロー・フィッシュ*1企業の代表者に対し、持続可能な水産(Sustainable Seafood)における自身の経験を紹介した。また、台東独自の手鏢バショウカジキ漁を紹介し、台東の環境に配慮した漁業慣行と海洋生態系への配慮について説明した。

 

米其林綠星餐廳EMBERSの主廚、郭庭瑋Wes Kuo氏は、台東慢食隊と協力し、年末パーティーのためにキビ、サトイモ、豆などの地元の味を取り入れた限定版の台湾メインコースセットメニューを考案し、台東の伝統的な味を最大限に表現した。



この様に、台東縣政府は、独自の「慢經濟(Slow Economy)」を広く認知するために、台湾国内外のあらゆるイベントに積極的に参加をしている。

台東縣縣長(知事)饒慶鈴氏のフットワークの軽さと積極性、そして、それに賛同し、協力するあらゆる産業界、コミュニティ、個人の力が台東縣を牽引していると言えよう。


人口が僅か21万人ほどの台東縣。日本で最も人口の少ない鳥取県の55万人の半分以下しかないにも関わらず、常に、県内では様々なイベントが行われており、そのイベントも国際イベントとなっているものもある。

そして、海外のイベントにも積極的に参加する台東縣は、その知名度を確実に上げている。

記者が思うに、台湾国内で台東縣は一番辺鄙な場所にあると思う。西側には新幹線が走っている。南投縣には新幹線が走っていないが、台中からは1時間ほどの距離にある。

台東縣は、台北からだと台湾鉄道の特急を使っても約3時間半。高雄からでも2時間半かかる。

この様な辺鄙な場所にあるにもかかわらず、その辺鄙であるが故に残されている自然、文化、習慣を上手く産業や生活に有効活用しているのが台東縣であり、正に、地域活性化、地方創生の成功事例といえる場所である。

 

*1 「スロー・フィッシュ」は、持続可能な漁業や海洋保護を推進する国際的なキャンペーンであり、イタリアのジェノバで定期的に開催される同名のイベントです。スローフード運動の一環として、職人的な小規模漁業の保護、軽視されがちな魚種の消費促進、海洋資源の管理改善、そして消費者がより良い選択をするための情報提供を目的としています。

≪主な目的≫

小規模漁業と伝統的技術の保護: 職人的な漁業が持続可能な海洋生態系に不可欠であると考え、その保護を支援します。

海洋生物多様性保全: 乱獲される可能性のある人気種だけでなく、豊富で持続可能な海洋世界の全体像を人々に知らせることで、生物多様性を守ります。

責任ある魚の消費の促進: 消費者が情報に基づいた選択をできるよう、様々な魚種について情報を提供します。

地域社会の支援: 漁師、シェフ、学者、消費者などが集まり、地域に根差した持続可能な解決策を見つけるためのプラットフォームを提供します。

 

出典:慢食臺東 Slow Food Taitung、台東縣政府、台東最速報

写真:同上

この記事は2025.11.14慢食臺東 Slow Food Taitung、2025.11.19・21台東縣政府(台東縣饒慶鈴縣長Facebook)、同日、台東最速報発表の内容を日本語訳し活用したものです。原文と相違がある場合は、公式サイトに掲載されている原文が優先されます。